藍星賞 過年度

【2022年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門  前大 純朗(立命館大学スポーツ健康科学部  助教

2.研究部門  松村 哲平(立命館大学大学院 スポーツ健康科学研究科博士課程前期課程2回生

3.教育部門  松田 祐一(立命館慶祥中・高等学校 教諭

4.国際部門  山本 和広(立命館大学 スポーツ健康科学部 卒業生6期生 現シアトル・マリナーズ マニュアルセラピスト 


1) 前大 純朗氏

 前大氏は、筋力や筋量の増加に効果的なトレーニングの方法や、アスリートの運動パフォーマンスの規定因子に関する研究を精力的に進めており、これまでに査読付き国際学術誌に40本以上の論文を掲載している。2022年度においても、6(筆頭1、共著5)本の論文が掲載され、2023年2月時点で他にも4(筆頭1、共著3)本の論文が査読中である。また、研究費の獲得にも積極的であり、科研費(基盤B、他)や民間の助成金(ヤマハ発動機スポーツ振興財団、他)など、研究代表者としてこれまでに4,000万円以上の競争的外部資金を獲得している。加えて、研究成果をスポーツの現場で講演・実践指導するなど、本学部のアウトリーチ活動に貢献している。以上の理由から、前大氏は藍星賞に相応しい人物であると判断します。 

 

 

2) 松村 哲平氏

 松村哲平さんは、学部生時に卒業論文として遂行した研究成果を、本学のハイインパクトジャーナルに分類されているスポーツ医学会の格調高い国際誌 Medicine &Science in Sports & Exercise誌に、筆頭著者として、「Acute Effect of Caffeine Supplementation on 100-m Sprint Running Performance: A Field Test」と題して発信しました。これまで、カフェインがスポーツ競技力向上に効果的であることは報告されていましたが、陸上競技の100 m走に対する有効性は検討されていませんでした。松村さんたちは、100 m走に対するカフェイン摂取の急性効果を、しっかりと統制された条件の下、実際の100 m走のフィールドテストにて実証しました。その成果は、NHKのニュースにも取り上げられ、全国的に大変な反響を呼んでおります。

松村哲平さんは、現在大学院博士課程前期課程2回生として在籍し、引き続き、カフェインの身体運動能力に対する効果を、急性の摂取量やカフェイン摂取習慣なども考慮して検討しております。その成果もまた、同上の国際誌に投稿し、現在は査読中でございます。さらに現在は、カフェインの作用機序を、分子レベルで検討する基礎研究にも着手しております。

将来は、スポーツ科学のエビデンスを現場に応用・還元すべく、基礎研究と応用研究を往還する最先端の研究を展開していきたいと標榜しており、次世代研究大学としての本学を牽引する、まさに次世代の研究者として、今後の活躍が大いに期待できる人物です。また、スポーツ健康科学部生時代は、1回生時から最終学年時まで、連続して西園寺記念奨学金を受賞していることからも、スポーツ健康科学部・研究科生として、今後のロールモデルとなる人物でもあり、同世代や次世代の学部生ならびに研究科生に対する波及効果は計り知れません。

 

 

3) 松田 祐一氏

 松田先生は立命館慶祥高校ラグビー部の監督として、創部26年目に北海道大会において強豪札幌山の手高校に18対7で勝利し、念願の全国大会(花園出場)の切符をつかんだ。ご存じのように、札幌山の手高校は、選手のリクルート、練習時間を含めて、スポーツ強化に熱心な高校であり、一方で立命館慶祥高校は、進学校かつ練習時間の制約がある。その中で、松田監督の指導は、従来の強豪校、スポーツ強化校にはない考え方があり、その指導スタイルの変革が今回成果をもたらし、新しい指導スタイルを示すことになった。

監督が練習メニューを決め、支持を出す練習から、生徒たちがミーティングを重ね、自分たちで何が課題で今何をやるべきかを話し合いながら主体的に練習に取り組む形に変えた事である。試合においても監督が指示を出すのではなく、選手自らが考え判断するスタイルに変わり、今回の全国大会につながった。自分の指導スタイルを変え、向上心を持って指導に当たる姿勢は素晴らしい。

これからも良き指導者としてますますの活躍が期待されます。

 

4) 山本 和広氏

 山本和広さん(シアトル・マリナーズ)は、本学部のGATプログラム2期生として、East Stroudsburg Universityの修士課程に進学。コロナ禍の2020年7月、米国のアスレティックトレーナー資格(ATC)を取得後、アスレチックトレーナーとして、全米大学体育協会一部リーグに所属する大学や、Ball State Universityのダンス演劇学科で、舞台芸術に関わる学生を担当してきた。

 そして現在、マニュアルセラピストとしてメジャーリーグ(MLB)のシアトル・マリナーズに加入。メディカルスタッフの一員として全162試合に帯同し、同球団所属メジャーリーガの治療を担当している。 

 山本さんは在学中より、GATプログラムの他、海老ゼミで日本の食文化とスポーツ栄養学を学び、BKC国際寮でのレジデントメンターや、国立スポーツ科学センターでインターンを経験するなど、興味関心とその活動は多岐渡っていた。

 山本さんがマリナーズへの採用が決まった際のコメント「球団からは、スポーツ健康科学部で学んだ学際的な視点や、舞台芸術医療での経験、さらには国際的な文化的背景を高く評価して頂いた。球団から、『野球で長年やってきた私たちにはない経験を、シアトル・マリナーズで発揮してほしい』と言われ、多種多様な専門家が集まるこの球団でこれからどんな挑戦ができることをとても楽しみにしている」に象徴されるように、スポーツ健康科学部の学びを、世界のスポーツの世界へ発信する卒業生の代表として、山本和広さんは『藍星賞』に相応しい人物である。


オンラインにて表彰式にご参加いただいた前大先生

表彰式の松村さん(右)と学会長の長積先生(左)

オンラインにて表彰式にご参加いただいた松田先生

山本 和広さん

【2021年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門  森嶋 琢真(中京大学教養教育研究院 准教授)

2.教育部門  木下 裕介(立命館宇治高等学校教諭 アメリカンフットボール部監督)

3.国際部門  廣松 千愛(立命館大学スポーツ健康科学研究科博士課程後期課程)

4.社会連携部門 杉山 敬(立命館大学スポーツ健康科学部 特任助教


1) 森嶋 琢真氏

 森嶋琢真氏は、本学スポーツ健康科学研究科博士課程前期課程・後期課程の一期生であり、後藤一成教授の指導の下、精力的な研究成果をまとめた博士論文「健康増進をねらいとした低酸素環境での運動の効果に関する研究」を提出し、本研究科における最初の博士の学位を授与された人物である。さらに、本研究科博士課程後期課程在学中に本研究科において,最初に日本学術振興会特別研究員へ採用された人物でもある。したがって、今日の本学部・本研究科の国際的かつ飛躍的な発展の礎を築いた人物である。森嶋氏は、学位取得後、米国のUniversity of Missouriに留学し、そこで新たに血管機能に着眼した研究を開始した。具体的には、デスクワークや海外旅行のような長時間の座位によって生じる脚部の血管内皮機能の低下を抑える効果的な運動トレーニングあるいはサプリメント摂取の効果を検証した研究成果を多くの国際学術誌に発表している。さらに、留学後は、筑波大学、法政大学、そして、本年度着任された中京大学において、運動と血管機能の関係、とりわけレジスタンス運動によって生じる血管内皮機能の低下を抑える効果的な運動方策の探索やその機序解明を目指した研究成果を多くの国際学術誌に発表している。したがって、今後も本邦のみならず世界のスポーツ健康科学研究をリードする先駆的かつ精力的な研究成果の発信が期待できる人物である。

 森嶋氏には、本年度開催された立命館大学スポーツ健康科学部・研究科10周年記念式典において、「2050年におけるスポーツ健康科学」をテーマとしたパネルディスカッションに本研究科の修了生を代表し、ご登壇頂いた。また、本学部における運動生理学の講義においてもこれまでの精力的な研究成果を運動生理学の観点に立脚し、ご講演を頂いた。したがって、本研究科を修了した現在においても本学部・本研究科の発展ならびに学生の学びに貢献して頂いている。

以上の精力的な研究実績ならびに本学スポーツ健康科学部・研究科への尽力を鑑み、森嶋氏は、藍星賞(研究部門)を受賞するに相応しい人物である。

 

 

2) 木下 裕介氏

木下裕介氏(立命館宇治中学校・高等学校 教諭)は、2018年に立命館宇治高校アメリカンフットボール部監督に着任されて以降、公式戦戦績32戦27勝、うち2度の日本一(2019年度、2021年度)を達成されるなど、輝かしい実績を残されている。2019年度の日本一については、立命館宇治高校アメリカンフットボール部創部初であり、今なお、学園の新たな歴史の一部を創造されている。

その指導の特徴は、まさに「人間教育」。部員(選手・マネージャー)に対する指導、教育はもちろんのこと、ともにチームを組織するコーチに対しても1人1人と丁寧かつ真剣に向き合い、対話し、これを積み重ねることでチームに携わる全ての人間力を総合的に向上されてきた。結果として、立命館宇治高校アメリカンフットボール部は、あらゆるステークホルダーから支援され応援されるチームに成長を遂げている。加えて、チーム力・組織力の向上に比例して、先述のとおり大きな成果を上げられた。

「人間教育」を軸としたチーム力強化の手腕は、指導を受けた選手、チーム関係者、他の指導者・教育者など、チーム内外問わず多くの評価を得ており、スポーツをとおした「教育」の1つのロールモデルを示されたと言っても過言ではない。

このように、教育者として、アメリカンフットボールをとおして大きな功績を残されている木下裕介先生は、藍星賞受賞にふさわしい人物である。

 

 

3) 廣松 千愛氏

 スポーツ健康科学部卒業生(2期生)である、廣松千愛さんは、本学部卒業後、管理栄養士を目指し、養成課程のある公立大学に編入し、卒業と同時に管理栄養士の資格を取得した。

この間に、自らの積極性と語学力を活かし、カナダ(モントリオール)にてカナダナショナルチームやシルク・ドゥ・ソレイユ、また、イタリア(ミラノ)にてセリエAユースチームの食事・栄養管理などを現地にて学び、国内外のネットワークを構築。管理栄養士資格取得後は、フリーランスとして、サッカーやバスケットボール等、様々なプロ選手に栄養管理のサポートや食事提供を行う他、Jクラブやプロ野球のアカデミーにて、育成年代の選手への食育も行っている。

昨夏開催された、第32回オリンピック・パラリンピック競技大会(2020/東京) においては、陸上の寺田明日香選手、トライアスロン・パラトライアスロンナショナルチームに対し、複数回にわたり合宿帯同を含む栄養サポートを実施。日本選手の国際競技力向上に貢献した。

また、昨年末には、IOC Diploma in Sports Nutritionを取得。国内外における今後の活躍が大きく期待される。

以上、スポーツ健康科学部卒業生の新しい活躍の可能性を示す存在でもある、廣松千愛さんは『藍星賞』受賞にふさわしい人物である。

廣松さんの活動の詳細については以下を参照下さい。

https://colory.jp.net

 

 

4) 杉山 敬氏

杉山 敬氏(特任助教)を藍星賞 社会連携部門の表彰対象者として推薦します。

 その理由は、以下の通りである。

①スポーツ庁の助成事業「女性アスリート支援プログラム」

「女性ジュニア・アスリートのパフォーマンス向上とスポーツ傷害予防トレーニングの創発プラットフォームの構築―ネットワークを活用した最先端の「知」の共有と次世代型指導者の育成システム―」の企画・運営リーダーとして、この事業の推進にあたり、京都府中体連・高体連、滋賀県中体連・高体連との連携を促進し、中学、高等学校の先生方に本プロジェクトを広めて協力関係を構築し、多くの生徒に「スポーツ傷害予防」のプログラム提供を行った。もちろん、大きなプロジェクトであり、参加メンバーも多数いるが、その中心的な役割を果たしたことは、メンバー一同、意見の一致するところである。

http://www.ic.fc.ritsumei.ac.jp/athlete/member.html

 

 ②上記のプロジェクトで構築したネットワークから、中学、高等学校でのワークショップ、相談についても適宜行い、「スポーツ健康科学」を生徒のみなさんへ広めた功績は大きい。

 

③スポーツ傷害予防のオンライン・シンポジウム、ワークショップについての運営・企画についても大きな貢献を行い、本学部の研究力を社会に発信し、連携を深めた功績は大きい。



森嶋琢真さん

木下裕介さん

廣松千愛さんと長積先生

杉山敬先生と長積先生

左から杉山先生、廣松さん、学会長の長積先生

【2020年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門 塚本 敏人(立命館大学スポーツ健康科学部  助教)

2.教育部門 菅 唯志(立命館大学スポーツ健康科学部 研究准教授)

3.国際部門 前大 純朗(立命館大学スポーツ健康科学部 助教)

4.社会連携部門 髙尾 憲司(2021年3月 立命館大学スポーツ健康科学研究科スポーツ健康科学専攻博士課程修了


1) 塚本 敏人氏

塚本敏人氏は、本学スポーツ健康科学研究科の博士課程前期・後期課程出身者です。在学時、スポーツ健康科学研究科で初めて日本学術振興会特別研究員DC1に採択された人物であるとともに、本来3年間の修学期間を1年間短縮でき、早期修了生として2年間で学位を取得したスポーツ健康科学研究科初の人物でもあり、今日の本学スポーツ健康科学研究科の飛躍に学生の立場から深く関わってきました。その後、英国での研究活動を経て、学部・研究科創設10周年を迎えた本年度より、スポーツ健康科学部の助教として教育・研究活動に励んでおります。この間、一貫して認知機能に関する研究を行っており、脳の健康科学分野の発展に貢献しております。

塚本氏は、2020年度、5編の学術論文と1編の総説を発表しており、投稿中の学術論文6編と10編を超える投稿準備中(再投稿含む)の研究成果を含めると、スポーツ・健康科学分野の発展のために、精力的な研究活動を行っている”Beyond Border”であることが客観的にもわかります。こうした研究成果は、国外のシンポジストを含むシンポジウム(第98回日本生理学会、2021年3月開催)で発表することが決まっております。引き続き、研究活動を活発に取り組むための外部獲得資金も民間の財団から2件得ており、今後も多くの研究成果が期待できます。

2020年度、特筆すべきは、脳の血流調節機能に対する朝食の重要性を明らかにし、この研究成果をまとめた学術論文を、生理学分野で著名なAmerican Journal of Physiologyに筆頭・責任著者として発表している内容になります(Plasma brain-derived neurotrophic factor and dynamic cerebral autoregulation in acute response to glycemic control following breakfast in young men)。この学術論文は、当該分野の国内外の専門家と共同で発表したものであり、世界中の誰しもが日常的に対峙する朝食について、その「質」が脳の健康維持に重要であることを示した、社会的価値の高いものです。国境の垣根をも超える研究のための考動力を持つ塚本氏は、藍星賞を受賞するに相応しい人材です。

 

 

2) 菅 唯志氏

菅唯志氏は、学生の高い研究力ならびに成果の発信力の涵養が、日本一の学部・研究科を目指すうえでの根幹である考え、これまでに多くの本学部生や大学院生に対して熱心に研究教育を展開し、国内外の学術論文や学会発表を通して多様かつ多数の研究成果を発信している。学部生、院生への研究教育の成果として、5年間の助教の間に、32本の論文を国際学術誌に掲載され、75本の演題を国内外の学会にて研究成果を発表された。学生の国際発信力およびプレゼンテーション能力を向上させることに尽力をつくされながら、すべての論文において、責任著者として関わり、研究成果を論文にまとめるプロセスを学生に学ばせ、また、喜びを持たせた功績は、藍星賞 教育部門賞に相応しい人材です。

 

 

3) 前大 純朗氏

前大純朗氏は、英国のラフバラ大学と共同で、「アスリートの筋形態特性」や「レジスタンストレーニングに対する身体の適応」に関する研究を進めている。なお、ラフバラ大学は、QS社が発表する最新(2017-2020年)の大学ランキングにおいて、スポーツ関連領域で4年連続世界一に選出されており、国際的に高い評価を得ている大学である。その共同研究の一部は、「The Muscle Morphology of Elite Sprint Running」としてMedicine and Science in Sports and Exerciseで2020年10月に早期公開され、The GuardianCNNなどの大手を含む100以上の報道機関に取り上げられている。また、ラフバラ大学との共同研究は、インペリアル カレッジ ロンドンやカリフォルニア大学サンディエゴ校との共同研究に発展し、前大先生を筆頭または共著者として複数の論文が現在査読中であり、今後も多くの国際共同研究の成果が期待できる。

前大氏は、上記の個人レベルでの国際共同研究に加え、大学レベルでの国際交流にも尽力している。事実、2019年2月に英国ロンドンにて本学とラフバラ大学が共同開催したシンポジウムでは前大先生が司会を担当し、2019年7月には同大学の Folland 教授を客員教授として招聘している。さらに、2020年度に採択された本学の「海外大学とのグローバル研究連携推進プログラム」では、ラフバラ大学を連携先に含み、日本国内での研究セミナーやワークショップの実施、学生の交換留学を計画している(2021年度に実施予定)。以上、前大先生は、国際共同研究や海外大学との交流を通して、立命館大学の国際プレゼンスの向上に大きく貢献している。

 

 

4) 髙尾 憲司氏

高尾憲司氏は、男子陸上競技部長距離パートのコーチを務め並びに、本研究科の社会人院生として、2021年2月、博士論文公聴会をおえて、2021年3月に博士課程を修了した。

その高尾憲司氏は、上述の活動に加えて、2015年より視覚障がい者マラソンのサポートを学生達と取り組んできています。サポートを行った近藤寛子選手(滋賀銀行)が2016年リオパラリンピック女子マラソン日本代表に選出され、5位入賞を果たしました。また、2020年2月2日に開催された別府大分毎日マラソンでは、井内菜津美選手(みずほファイナンシャルグループ)がT11クラスの世界記録を達成しております。パラアスリートのサポートを通じて、パラアスリートとの競技力を高めるだけでなく、その魅力を社会にアピールするとともに、その活動に学生を参画させることで学生のスポーツの見方、考え方を発展させるとともに、学生の成長も促している。

活動実績(下記を参照ください)

・サポート力に男子陸上競技部長距離パートとパラアスリートの挑戦

http://www.ritsumei.ac.jp/sports-culture/sports/topics/detail/?id=424

・視覚障害二つの世界新 道下、井内「こんな私でも達成できた」別大マラソン

https://mainichi.jp/articles/20200202/k00/00m/050/183000c

・令和元年度スポーツ功労者顕彰

https://www.mext.go.jp/sports/b_menu/houdou/jsa_00054.html


左から学会長の長積先生、塚本先生、菅先生、前大先生、髙尾さん(2021年6月)

【2019年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門   長谷川 夏輝  (立命館大学スポーツ健康科学部 研究員)

2.教育部門   堀 美幸 (立命館法人 一貫教育部アスレティックトレーナー )

3.国際部門   大塚 光雄  ( 立命館大学     スポーツ健康科学部 助教)               

4.社会連携部門 佐藤 隆彦(2016~2019 立命館大学     スポーツ健康科学部 助教) 


1)長谷川氏は、2019年度、Experimental Gerontology誌に筆頭著者として「Aging-induced elevation in circulating complement C1q level is associated with arterial stiffness」を発表した。これまで、骨格筋の線維化に関わる補体とされたC1qが、加齢に伴う動脈硬化と関連することを横断研究によって明らかにしたものである。循環系疾患の理解を深める成果を挙げた当該功績は、研究部門における表彰に値する。

 こうした精力的な研究活動と付随した研究業績に加え、今年学部・研究科開設10周年の節目を迎えるにあたって、学部・研究科、教職員すべてに対して実施した10周年記念ロゴの公募の中から、見事採択されたロゴを考案した。下記は、長谷川研究員がロゴに向けた想いである。まさしく、我々立命館大学スポーツ健康科学会員がこれまでを顧み、そして未来に向けて教育・研究活動を発展させていこうとする想いの縮図であり、藍星賞を受賞するにふさわしい功績である。 

ロゴについて(長谷川氏より):立命館大学の学園ビジョン「挑戦をもっと自由に」のスローガンをもとに、スポ健10周年ロゴにもその在り方を示しています。スポ健に関わる人たちが、これまで歩んできた10年の歴史を感じるとともに、これからの10年でさらに未来を創造していくという意味合いを込め、10という数字を前面に出し、10周年であるという視認性を高めつつ、その中央に立命館の「R」を入れ込みました。また、さまざまな境界や自らの限界など、既存の枠を超えて未来をつくり出すという意味が込められた立命館のアイデンティティー「Beyond Borders」をロゴに記載するとともに、2本の線が「10」を突き抜けることで、これからのスポ健が10周年にとどまらず、さらに勢いよく世界に飛び出していく様子を表現しました。さらに、この角度の異なる2本の直線は頂点で1つに重なった形にも見えます。これは交わることがないと思われている2つの事象から1つの全く新しい発見・価値を生み出し、未来を拓いていくといった「創造と変革」や、スポ健の強みである、文理融合による総合的・学際的な教育および研究のイメージも表しています。

2) スポーツ庁は、「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(2018.3)」において、運動部活動の合理的でかつ効率的・効果的な活動の推進のための取組について示した。その中で、運動部顧問は、スポーツ医・科学の見地からは、トレーニング効果を得るために休養を適切に取ることが必要であること、また、過度の練習がスポーツ障害・外傷のリスクを高め、必ずしも体力・運動能力の向上につながらないこと等を正しく理解すること、さらに、生徒とコミュニケーションを十分に図り、生徒がバーンアウトすることなく、技能や記録の向上等それぞれの目標を達成できるよう、競技種目の特性等を踏まえた科学的トレーニングの積極的な導入等により、休養を適切に取りつつ、短時間で効果が得られる指導を行うことが望ましいとしている。

立命館附属学校は、運動部活動に意欲的に取り組んでおり、全国大会でも活躍をする部活動が多く、部活動を指導する教員等により熱心に指導されている。しかし、学校全体として組織的対応として、スポーツ医・科学の意見を取り入れ、競技力向上に取り組めていない部分もある。

 堀氏は、ATC(Certified Athletic Trainer:米国公認アスレティックトレーナー)の資格を有しており、2019年度立命館大学附属学校を定期的に訪問され、運動クラブ活動に対して科学的・スポーツ医科学の知見を取り入れ、より効率的な指導のあり方を導入することにより選手の競技力向上に一層取り組みを行った。

具体的には立命館大学附属学校に対して下記の研修及び指導を積極的に行い、科学的なトレーニング指導や障害防止、運動部活動の組織に対する提言を行い、生徒・教員の運動部活動に対する意識変革及び主体的な運動部活動運営、短時間で効率的な活動について取り組むクラブが増加した。また、危機管理に対する提言を頂き、各附属学校に対して啓発・改善する取り組みを行う事ができた。

【附属学校に対する主な取り組み】

・体育授業、運動クラブ活動における健康管理や組織運営あり方に関する指導

・クラブ活動指導者、競技者、マネージャーに対してスポーツ障害の予防及び再発予防についての啓発指導

・クラブ活動指導者、マネージャーに対してスポーツの現場での救急処置研修

・運動クラブ活動に関する組織運営及び健康管理に関する研修

・健康管理とクラブ組織運営のあり方に関する研修

・指導者や選手をはじめ関係者に対する情報提供及び教育的指導

3)大塚氏は,国際スポーツバイオメカニクス学会において理事として同学会の運営を行うため,2019年3月に選挙に立候補した。推薦者は同時期に理事をしていたMarcus Lee博士であった。同学会に所属する世界中の会員によるインターネット投票の結果,選出された11名の理事の中に大塚氏が入ることができた。大塚氏は,2019年8月から2021年8月までの2年間,同学会における運営・企画をすることとなっている。

このように,国際的な学術機関をオーガナイズする大塚氏は,藍星賞を受賞するにふさわしい人物である。

4)佐藤氏は、京都府高等学校体育連盟理事長からの依頼を受け、京都府立鳥羽高等学校ウェイトリフティング部の科学サポートを行った。スポーツ健康科学部の研究機材を活用し、高等学校の指導現場では実施することの出来ない詳細なデータ取得を実施した。各選手から取得したデータを基に、フォーム改善に関わる専門的なフィードバックをバイオメカニクスの観点から行った。これらの成果を評価され、第54回全国高等学校体育連盟研究大会において、各発表者に個別のアドバイスを実施する助言者として招聘された。各発表に対して、研究デザインやデータの解釈について壇上で助言を行い、会場に赴いた高校体育連盟に所属する部活動顧問教員が研究的アプローチを行う上での示唆を与えた。各発表者への助言の後、全参加者に向け、近年の研究成果やバイオメカニクスの知識を交えた全体指導を実施した。このように、滋賀県で初めて開催された全国高等学校体育連盟研究大会の成功に大きく尽力した。加えて、スポーツ健康科学部においても、体験授業、サマースクール、ひらめきときめきサイエンス等において、専門的な実験機材を活用した学びを参加者に提供してきた。これらのアウトリーチ活動を通して、本学部と社会との連携を促した功績は表彰に値する。

長谷川氏が考案した10thロゴ

2019年度受賞 大塚先生

【2018年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門 福谷 充輝

2.教育部門 日裏 徹也

3.国際部門 細川 由梨 岡松 秀房

4.社会連携部門 大橋 知佳


1)福谷先生は、大学院時代から現在に至るまで、一貫して筋収縮に関する研究を行っている。大学院生時代には、ヒト生体を対象に、筋力計、筋電図、電気刺激、超音波、MRIなどを用いて、神経生理学や筋形状の観点から筋収縮メカニズムを検証してきた。博士号を取得した後は、これまでの研究も継続しつつ、動物の摘出筋を使った研究にも着手しており、日本学術振興会の海外特別研究員という制度を利用して、筋収縮研究で世界的に著名なCalgary大学のHerzog研究室に留学し、単一の筋細胞、さらには単一の筋原線維を用いた力学測定を習得した。2018年4月にスポーツ健康科学部の助教となってからは、その手法を用いた研究をさらに発展させるため、日本の大型放射光施設SPring8の八木直人特別研究員や、筋疲労研究で世界的に有名なKarolinska研究所のHakan Westerblad教授との共同研究にも着手している。研究成果も出始めており、2018年には2本の論文がMedicine and Science in Sports and Exercise (MSSE)に掲載され、そのうちの一つである「Fukutani A, Herzog W. Residual Force Enhancement Is Attenuated in a Shortening Magnitude-dependent Manner. Med Sci Sports Exerc. 2018;50(10):2007-2014.」は、編集長の目に留まり、MSSE 2018年10月号の “News and Views” にて紹介された。2019年1月時点で4本の論文が国際誌にて査読中であり、それ以外にも国際誌の総説執筆を依頼されている状態であるため、引き続き多くの研究成果が期待できる。また、学生の指導にも力を入れ始めており、指導している学部生が、2019年7月の国際学会で発表する予定である。

 このように、福谷先生は積極的に研究活動を進めており、世間で推奨されている国際化 (海外での研究成果発表、国際共同研究の展開) という観点からも申し分ない実績を有している。加えて、学生への研究指導を通じて、本学の教育発展への貢献も期待できる。

 

2) 日裏氏は、2018年度の立命館慶祥高等学校陸上競技部の指導において、全国大会で2つの優勝を含む13の上位入賞を果たすなど、高い指導実績を残した。

特に、全国高校総体では、女子400mRにおいて北海道高校新記録を45秒91から45秒68へ大幅に塗り替えて優勝(高校記録でも歴代5位)するとともに、女子100mにおいて決勝に本校から2名が進出し、立命館旋風を巻き起こした。個別競技のみならず、総合成績においても立命館慶祥初の7位入賞を果たした。このときの最大の功労者である臼井は、日本陸連により東京オリンピックの強化選手として選ばれて話題となったが、日裏氏の早くからの懇切丁寧な進路指導により、学外流出を逃れ、スポーツ健康科学部への学内進学を決意させた。

 国民体育大会においては、日裏氏は北海道女子の監督として初めてチームを率い、本校生徒4名の活躍もあり、皇后杯(女子総合)3位を獲得した。

 加えて、立命館慶祥高等学校の授業においては、日裏氏は学校設置科目として「スポーツと健康」の担当教員として、高校での教育では実践することが難しい乳酸値の測定や筋力測定など、スポーツ健康科学部への進学を強力に促すとともに、スポーツ健康科学部への進学を前提とした授業を行っている。

 進学実績でも、最も優秀な選手を立命館大学スポーツ健康科学部に進学させることはもちろん、早稲田大学スポーツ科学部への進学など、スポーツ学へのさまざまな進学実績を実現した。

 

3)細川先生は、アメリカのスポーツセーフティーに関する研究主管となるKorey Stringer Instituteで医科学委員および米国アスレティックトレーナーズ協会にて国際委員を務め、スポーツセーフティーに関する国際的な教育・研究・広報活動を通して日本のスポーツセーフティー向上に大きく貢献されている。また、適切な熱中症予防措置について最新の科学的根拠に基づき国内外で多数講演を実施するとともに、熱中症予防に関する研究に対して、国内および国外の様々な異分野の研究者と協働で取り組まれている。2018年度においては、10本以上の研究成果を輩出されており、大変優秀な業績を挙げられた。さらには、本学部・研究科の専門英語を担当し、学生の国際発信力およびプレゼンテーション能力を向上させることに尽力された。以上、本学部・研究科の国際化に大きく貢献された。

 

3)岡松 秀房 特任助教は、2014年スポーツ健康科学部に着任以来、一貫して GAT プログラム推進のための中心的な人物となり、ATC 取得を希望する学生の教育サポートに注力されてきた。岡松先生が、正課授業ならびに正課外授業において、非常に熱心に学生をサポート頂いた結果、これまでに2名の卒業生が ESU 大学大学院で学んでいる。また、今年度も新たな学生がアメリカの大学院に進学しようとしている。

 岡松 先生は、GAT プログラムの協定校との連絡において、スポーツ健康科学部の主要窓口となっており、海外の大学とも度重なる交渉を重ね、GAT プログラムの協定作りをされてきた。その交渉の一端については、『立命館スポーツ健康科学』第八巻 (2018) にまとめられている。また、これまでの ATC 生活で培った幅広いネットワークを通じて、GAT ステップアップセミナーに何人もの講師を招き、ATC 取得を希望する学生のキャリア意識形成においても、大きな役割を果たしている。さらに、GAT プログラム協定校の拡大にも貢献された。

 

4)校友である大橋知佳さんは、2016年度にスポーツ健康科学部を卒業後、株式会社東大阪スタジアム(HOS)に就職され、主に運動・文化施設の運営管理業務を担当されてきた。なかでも、2016年度に本学に開設された「スポーツ健康コモンズ」においては、その委託運営管理業務を担当され、授業開講期の大学実習授業のサポート、スポーツ健康コモンズで開講されている学生・教職員向けの各種プログラムの講師として活躍されるととともに、近隣の地域の親子や、幼児・児童を対象とした運動教室を開設するなど大学と地域の連携において大きな貢献をされている。

特に、幼児・児童向けの教室においては、スポーツ健康コモンズの施設や正門前の芝生広場等を会場とする、コオーディネーショントレーニングをその内容として位置付け、参加幼児・児童の運動発達に即した基礎的運動スキルのバランスのよい向上を図ることで、参加者における積極的な成果や、その保護者から高い評価を得ているとともに、スポーツ健康コモンズを中心とした大学フロントゾーンの活性化にも大きな貢献をされている。

また、これらの教室を定期開講プログラムとするために、さらにプログラムの完成度を高めることを目的として、スポーツ健康科学部と連携しながら、新しいプログラムの開発に取り組まれるとともに、ご自身も社会人として働きながら大学院でさらに高度な学びをしようと、スポーツ健康科学研究科への進学を決意された。

 このように、スポーツをもとに、子供と運動、地域と大学を強く結びつける行動力、さらにご自身の理想に向けて学び続ける姿勢は、スポーツ健康科学部のまさに輝く「星」として、在学生のロールモデルとしても、表彰されるに値する。

 

以上


表彰式の様子

表彰式の様子

表彰式の様子

表彰式の様子

左から学会長の長積先生、福谷先生、大橋さん

日裏先生(北海道在住の為写真を送っていただきました)

細川先生(東京都在住の為写真を送っていただきました)

岡松先生(別日にお渡ししました)

【2017年度藍星賞受賞者リスト】

1.研究部門 大塚 光雄

2.教育部門 岡松 秀房

3.国際部門 西条 正樹

4.社会連携部門 藤本 雅大

 

1)大塚光雄先生は陸上に関する研究に対して、熱心に取り組まれています。2017年度においては、5本もの研究成果を輩出されており、2017年5月には “Timing of gun fire influences sprinters’ multiple joint reaction times of whole body in block start”論文が、毎日新聞に興味深い内容として取り上げられており、日本のスポーツ科学分野を代表する若手研究者の一人として、大変優秀な業績を挙げられています。

2) 岡松秀房先生はGAT STEP-Up コースを通じて学生を英語およびアスレティックトレーニングに関しての教育支援しておられます。岡松先生の熱い指導が実り, GAT プログラムプログラムを通じて2017年度4回生1名がEast Stroudsburg 大学大学院(以下ESU)に入学することが出来き, 現在ESUにて学修しています。また、幅広い人脈を生かし様々な分野で活躍する方をGATキャリアセミナーの講師として招いており,学生の教育を熱心されています。

3)西条正樹 先生は立命館大学で英語の授業を担当されています。2017年度、西条先生は、大学生を主な対象として、幅広い層を対象とした Football English Session を開催されました。この講座は、西条氏を含め、海外で実際にサッカーやフットサルのプレーヤーやコーチとして活動経験のある方を講師とする、世界を目指すサッカーコーチやプレーヤーのための英語力向上コースです。数のゲストも招き、海外での実際の現場についての知識を共有するなど、スポーツ健康科学部生も含めた受講者にとって、大変大きな刺激となり、国際化への意識を高めることに貢献されました。

4)藤本雅大先生は高齢者の運動・バランス能力に対する,これまでの研究活動で蓄積された知識と研究成果を,「理論と実践」を交えた学びを通じて社会に発信することで,地域住民の健康維持・増進に貢献されています。2017年度は、草津市笠縫東学区まちづくり協議会による「健康リーダー育成講座」、滋賀県教育委員会による「あいこうか生涯カレッジ」、甲賀薬局を運営する株式会社レークケア主催の健康講座、ダイキン工業滋賀製作所の体力測定の取り組みなどにおいて講演を行い、地域の「健康づくり」に大きく貢献されました。

以上


2017年度受賞者の皆様。左から西条さん、岡松先生、会長伊坂先生、大塚先生、藤本先生